榎本ゆかりさんの「一刀両断」 『家主業とファッションセンス』

雑誌「家主と地主」の編集長は、榎本ゆかりさんという方です。

私はお会いしたことはないのですが、この方はなかなか着眼点が良いです。「一刀両断」というのは、編集長自ら執筆の1ページ記事で、ご自分の観点でひとつのテーマを、ばさっと切っていきます。内容にあった良い題名と思います。

もともと明るくカラッとした性格の方のようで、読んでいて嫌味がありません。のびのびと自由な環境で育ったのではないかと、勝手に想像しています(大きなお世話ですね)。

「一刀両断」する前に振りかぶるので、大きな隙が出来るのも、この記事の魅力です。

2012年4月号の「一刀両断」のタイトルは、「家主とファッションセンス」です。

女性の私にとって何が魅力的に感じるのかというと、(中略) 心地よい「デザイン重視」モデルが増えているからだ。

として、賃貸物件のデザインの重要さが述べられていきます。ここら辺は、上手な書き方、まとめ方だと思います。

50代の家主さんが1LDKの内装に5色使ったことに、「色を使えばいいというものでもないんだけど」と感想をもたれるのも、もっともです。

そして、最後のまとめに移ります。

入居者に選ばれやすい部屋づくりの第一歩はファッションセンスを磨くことにあるのではないか。「自分は無理」と最初からあきらめてはいけない。最初は人のまねでもいいのだ。そのうちセンスは磨かれていく。建物も家主さんも「おしゃれ」に大変身すれば、賃貸住宅のイメージも良くなるだろう。

私は、「入居者に選ばれやすい部屋づくりの第一歩はファッションセンスを磨くことにある」とはまったく思いません。榎本さんの思い込みだと思います。

入居者に選ばれやすい部屋づくりの第一歩は、見込み入居者の調査でしょう。対象となるだろう入居者の属性(年齢・性別・職業・年収・嗜好など)を調査し、その属性に合った価値(この場合は喜ばれやすい色やデザイン)を調査し決定し提供することが、入居者に喜ばれ選ばれやすい部屋作りの第一歩であると思います。

ファッションセンスを取り入れるのは大変良いことと思いますが、それは、マーケット調査にそった方向でやるべきで、自らのファッションセンスを先行させるのは趣味の家主業でしょう。特に、この文章の対象は、「センスのない人」なのですから、「センスで勝負するのではなく、見込み入居者に好まれる色やデザインを地道に調査したらどうでしょう」とアドバイスしたほうが有意義だと思います。

マーケット調査について一言も触れないまま、「入居者に選ばれやすい部屋づくりの第一歩はファッションセンスを磨くことにあるのではないか」と書くのは、不動産雑誌の編集長としては、軽率のようにも思えます。

しかし、私は良いのだと思います。榎本ゆかりさんの、隙を恐れず振りかぶり、一刀両断するかされるかの、後先を考えない発言は、実に面白いです。

「家主業とファッションセンス」という、この題材自体、本当に魅力的でセンスが良いと思います。たとえ、結論は破綻しているとしても。

「家主と地主」では、ちょっと変かなと思うけれども、読みやすく生き生きした楽しい記事に出会うことがあり、それは、編集長の個性が現れているからかもしれません。

榎本ゆかり編集長のますますのご健勝をお祈りいたします。

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榎本ゆかりさんの「一刀両断」 『家主業とファッションセンス』 への4件のフィードバック

  1. たろう のコメント:

    ミーも後先考えないパンキッシュなおじさんになりたいです

    • 村兵衛 のコメント:

      たろうさん、榎本さんの「キレ」は天然+後天的の純粋培養だと想像します。
      それでいて、雑誌をきちんとまとめていくのですから、力量は相当なものだと思います。
      パンクは一日にして成らず、ということかと思います。

  2. 零細オーナー のコメント:

    村兵衛さんのコメントの方が一刀両断ですね。

    • 村兵衛 のコメント:

      零細オーナーさん、私は榎本さんの本歌取を試みていて、そこに、そこはかとないユーモアも加えようとしています。
      あまりうまくいっていないですが。
      榎本さんは示唆にとんだ題材を提供されるので、面白いです。

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