雑誌「家主と地主」に掲載されているエッセイ、「日米家比較文化考」を私は楽しみに読んでいます。
今回、筆者の黒川 鐘信さんは大学院に進学し、夏休みに親戚がお金を出し合って購入した軽井沢の別荘に一人滞在するのです。のんびり、ゆっくりした話です。
一行目の文がいいです。
「夏季休暇に入った翌朝、私は胸をわくわくさせながら沓掛(現中軽井沢)へ向かい、下車すると駅近くの金物屋で石油コンロと石油ランプを買った。」
休みに入った次の日に出発いうことで、期待の高さがわかります。「わくわくさせながら」という、簡潔な表現は、素直な気持ちを伝えます。「金物屋で石油コンロと石油ランプを買った」ということで、別荘が未完成なことを知らせながら、時代背景を読者に知らしめます。
「沓掛」という地名でさらに時代が伝わりますが、筆者の黒川さんは映画監督志望だったので、「沓掛時次郎」を思うと、「中軽井沢」は使いたくなかったのでしょうね。
到着した別荘は未完成もいいところ、建物はあっても基礎はなく、黒川さんは建築会社の作業員の工事を手伝ったりしながら、別荘完成までの成り行きを見ていきます。家の完成していく様子が楽しく伝えられます。
家の色を決めるのに、黒川さんは持っていった本、「緑の館」から緑色に決めるのですが、ここで「緑の館」をもってくるのが大変上手です。
英文学を勉強する裕福な家の学生、映画好き、ロマンチストといったキーワードが頭に浮かぶとともに、早川 雪洲、ロサンゼルスといった言葉を読者の頭に浮かべさせて、次回への準備をしながら「日米家比較文化考」という大きな枠組みを再確認させます。
この別荘の名前「静の草屋」をつけるまでの藤村のエピソードも面白いのですが、この部分はちょっと説明的過ぎました。黒川さんの、ペダンティックな感じを少し加えるところは共犯的な感じを与えていいのですが、「わからなくてもいい」ぐらいでやってもらうとエッセイらしくてよいと思います。
次回はアメリカの話のようで、楽しみに待っています。
前回の家主と地主は大家さん特集を見ただけでげんなりしてしまい、全然読みませんでした。
村兵衛さんの記事を読んで、いい内容のものもあるのだから読まないと、と思いました。
でも、夜の貴重なひと時、小説でも読みたいなあという自分も居て、まだ家主と地主は読めておりません。
次が来ないうちに読むようにします。
零細オーナーさん、こんにちは。
「家主と地主」は、大抵、出張中の電車の中で読みます。
小さな記事の中に、面白い話を見つけることもあります。侮れません。
考える機会を与えてくれるので、そういうために読んでいます。、