日経ヴェリタス第241号の榊原 英資さんの書いた記事の題名が、「日本は世界に誇れる成熟国家」でした。
「成熟国家」で経済成長率が低くなるのは当たり前。日本の一人当たりのGDPは、人口5000人以上の国ではアメリカに次ぐ2位。「環境」「安全」「健康」でも世界トップクラス。
したがって、「日本は世界に誇れる成熟国家」という理屈です。
私がこの素直な理屈に必ずしも賛成できない理由は、国の財政です。榊原さんは、この点について何も述べていません。
国債は国内金融機関が買っているので、「税金を上げずに金を都合した」「経済変動のバッファとして国債を利用した」という見方が可能であることは、私も分かります。
国債を発行しなければ、「好況時に減税・ばら撒き、不況時に増税」となり、国の財政は安定しないかもしれません。現在の「不況」を循環型と考えるのであれば、国債の発行は正当化されるでしょう。もし、不況ではなく「成熟国家」として当たり前の低成長、今後も大きな経済成長なしと考えるのであれば増税は必須で、その時、「環境」「安全」「健康」は脅かされるかもしれません。
成熟国家に見えるかもしれないが実は危うい均衡の上に成り立った状況かも知れず、その議論がないのは、なんとも気楽だと感じました。
「成熟国家」に共通してみられるのは債権の問題で、これが世界の経済をめちゃくちゃにするかもしれません。